仮想通貨で利益が出た場合は、株やFXなどと同様、課税対象になり確定申告が必要です。この仮想通貨で利益が出た状態というのがどういう状態が正しく認識しているでしょうか。

有名な話として、2017年の仮想通貨の急騰の年、多額の利益を得たが納税ルールを誤認して確定申告を怠ったためにその後、払いきれないほどの納税義務を負った方々が発生し問題になりました。
仮想通貨の課税については、まだ十分に整備されている訳ではありませんが、少なくとも現時点(2022年5月)での納税制度について、投資している方は正しく理解しておきましょう。
仮想通貨の納税の仕組み


仮想通貨の納税は雑所得に分類され給与所得などの他の所得と合算して課税される所得金額が決まります。
その税率は株式のように一律何%とかでなく、所得金額に比例し税率が上がる累進課税方式です。
税率は最大45%であり、加えて住民税も10%かかるので、合計でなんと最大55%にもなります。
給与と合算して計算するので高い税率になりやすく、とても不利な税制と言えます。
確定申告が必要な3つのケース
仮想通貨を購入したり所有しているだけなら何もする必要はありません。
確定申告が必要なのは、主に以下の3つのいずれかのケースに該当した場合です。
原則20万円を超える利益が発生したときに確定申告(所得税)の必要があります。
ただし利益が発生すると20万円以下の場合でも住民税だけは対象となります。
その場合は確定申告ではなく市役所へ住民税申告が必要になります。
<確定申告が必要なケース>
取引の種類 | 所得の計算方法 |
---|---|
①仮想通貨を売却した場合 | 売却価額―取得価額 |
②仮想通貨で何らかの商品を購入した場合 | 購入した商品の価格―仮想通貨の取得価額 |
③仮想通貨を他の仮想通貨に交換した場合 | 購入した他の仮想通貨の価格―仮想通貨の取得価額 |
上記①~③のいずれかに該当する場合、以下の対応が必要。
・損失の場合は手続きは不要
・20万円以下の利益の場合は最寄りの市役所に住民税申告が必要
・20万円超の場合は税務署に確定申告が必要
(確定申告は所得税分の申告だが、このデータを基に市役所が住民税を勝手に計算してくれる)
※上記は給与所得者のケース。個人事業主や事業所得、不動産所得がある方やその他、何らかの確定申告を行う場合は20万円以下でも確定申告が必要
仮想通貨の税率
仮想通貨は雑所得に区分され、その税率は所得額によって税率が上がる累進課税方式です。
以下の表は所得税率と住民税の税率を示したものです。最高で55%の税率となります。
課税される所得金額 | 所得税の税率 | 住民税の税率 | 合計税率 |
---|---|---|---|
194.9万円まで | 5% | 10% | 15% |
329.9万円まで | 10% | 10% | 20% |
694.9万円まで | 20% | 10% | 30% |
899.9万円まで | 23% | 10% | 33% |
1799.9万円まで | 33% | 10% | 43% |
3999.9万円まで | 40% | 10% | 50% |
4,000万円以上 | 45% | 10% | 55% |
※これに加えて2037年までは「復興特別所得税」として2.1%の加算税があります。
計算方法
取得価額の計算方法は移動平均法と総平均法の2種類があり、いずれかを選択します。最初に選択した計算方法は、以降の申告でも同じ方法で計算しなければなりません。
計算に使用する書式、計算方法は国税局のHPで入手することができます。また暗号資産交換業者から送付される年間取引報告書を利用して計算する場合は総平均法を使う必要があります。
損益通算はできない
株式の場合は年間で損失が発生した場合に3年間、損益通算することができますが、雑所得である仮想通貨の場合は仮想通貨以外の所得との損益相殺や、年度を跨ぐ損益相殺はいずれもすることはできません。
申告しなかった場合のペナルティ
確定申告をしなかった場合、加算税と延滞税が課せられます。
加算税は4種類あります。過少申告、無申告、隠ぺい、など違反の重さによって10~50%のペナルティが課せられます。延滞税は申告が遅れる場合に発生するもので最大で14.6%の年利のペナルティが発生します。
運用で気をつけること


取引の記録をつける
利用している仮想通貨業者ごとに1年間の取引履歴が確認できるはずです。一番分かりやすいのは年間取引報告書ですが、事業者によっては発行に対応していない場合もあります。その場合は事業者の指定する方法で取引履歴を確認する必要があります。
※仮想通貨業者が倒産等などにより取得や売買履歴が分からなくなるといったリスクを避けるためにも定期的に自身でも記録を残すことをおすすめします。
納税が発生する時の損益通算
仮想通貨の節税方法で最も基本なのは仮想通貨同士での損益通算です。
雑所得なので他の株式やFXなどの損失と相殺できませんが、仮想通貨同士なら可能です。利益を確定させようとする年度に損失も抱えていれば損切し合計で+20万円を超えないようにすれば所得税を回避できます。
例として50万円の含み益のあるビットコインと40万円の含み損をかかえているイーサリアムがあったとして、同年度に両方とも確定すれば相殺できて、10万円の利益となり所得税は発生しません。損益相殺しない場合は50万円のビットコインを売却した全額に対して所得税が発生します。
仮想通貨を初めて購入した時に必要な届け出
やっていない方も多いと言われているのが、初年度の届出です。
仮想通貨を初めて取得した年に限り税務署へ「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の提出が必要です。
届出が必要なケース
・初めて暗号資産を取得した場合
・異なる種類の暗号資産を取得した場合
仮想通貨の評価額については総平均法または移動平均法のいずれかの評価方法により算出することとされていますが、仮想通貨の種類ごとに選定して届出書を提出しなければなりません。
そしてここで届出をした評価方法は、以降の確定申告時にも同じ評価方法で計算していくことになります。
※本届出をしなかった場合、評価方法は「総平均法」に自動的になります。
まとめ


<仮想通貨の納税まとめ>
・20万円を超える利益が発生した年の確定申告は必ず行う、バレないだろうと無申告にするのは絶対ダメ
・20万円以下の利益が発生した場合は住民税申告のみ役所で行う
・利益が発生した状態とは仮想通貨の売却、仮想通貨を使っての買い物、仮想通貨の乗り換えのいずれかを指す
仮想通貨の最大の魅力は将来、何十倍、何百倍にもなるかもしれないボラティリティです。
しかし、法定通貨ではないため特に日本では現時点で仮想通貨で生じた利益に対する税制はとても厳しいです。
仮想通貨を運用する方で税制のことをよく理解せず、大きな利益がある状態で他の仮想通貨と交換し、納税を忘れたりすると、払いきれないほどの納税ペナルティを背負うことになりかねません。
特に高額な収益を上げた方の状況は、取引事業者を通じて国税局は把握することは可能ですので、必ず毎年の帳簿を自身で管理し、必要に応じて確定申告を行うようにしてください。海外の取引所を利用する場合でも同様です。
その際に計算方法などが分からなければ堂々と税務署や市役所に問い合わせしましょう。
絶対にしてはいけないのが、バレないだろうと考え利益が出たのに申告しないケースです。
税務署は仮想通貨事業者への調査を通じて誰がいくら儲かったのかの情報は簡単に把握できます。
仮想通貨の税制度は非常に不利なものになっています。今後も変化していくはずなので注視が必要ですが、世界で仮想通貨がもっと浸透してくれば、将来的に分離課税になることも十分ありえると思っています。